ビダール苔癬(別名:限局性神経皮膚炎)は、フランスの皮膚科医エミール・ビダールによって報告された限局性の湿疹・皮膚炎群の一種だ。医学的には「慢性単純性苔癬(Lichen simplex chronicus)」とも呼ばれ、限局性神経皮膚炎とほぼ同義として扱われることが多い。
最大の特徴は、強い痒みを伴う皮疹が長期間にわたって掻き続けられることで、表皮が過剰に増殖してキメが粗くなり、まるで動物の革のように硬く厚くなる「皮膚の苔癬化(たいせんか)」を引き起こす点にある。特に30代から50代の女性に多く見られ、髪で隠れやすい首の後ろや側頸部(うなじ周辺)に好発するため、発見や受診が遅れやすい傾向がある。
初期はわずかな赤みやカサつきに過ぎないが、爪を立ててボリボリと掻き壊す行為がトリガーとなり、皮膚内部の知覚神経(C線維)が表皮のすぐ下まで伸びて過敏化する。その結果、髪の毛先が触れただけでも激痛に近い痒みが走るという重篤な皮膚状態へと進行していく。