芳賀書店がカルチャー史に刻んだ足跡は、単なる一古書店の枠を遥かに超えています。1936年の創業以来、神田神保町古書店街で専門性を磨き、特に昭和40年代から50年代にかけては、映画・演劇・芸能・サブカルチャーの総本山として君臨しました。
同店の名を不滅にしたのが、自社出版物である『シネアルバム』シリーズです。国内外の名優や巨匠監督、名作映画を1冊丸ごと濃密に掘り下げたビジュアルムックは、インターネットが存在しなかった時代において、映画青年や研究者にとって最高峰のバイブルでした。関係者の回顧録でも「当時の映画関係者や批評家で、芳賀書店の棚に通い詰めなかった者はいない」と語られるほど、そのキュレーション力は突出していました。
さらに芳賀書店は、アイドル写真集やグラビア雑誌、成人向けカルチャーのパイオニアとしても大きな役割を果たしました。アングラカルチャーやエロティシズム、大衆芸能を恥じることなく文化として堂々と陳列・出版した姿勢は、昭和から平成初期のサブカルチャーの成熟に決定的な影響を与えました。