ネット上の旅行コミュニティや質問掲示板で長年議論が絶えないのが、「温泉浴衣の下には何を着るべきか」という下着の着用マナーです。
江戸時代の湯帷子(ゆかたびら)に起源を持つ温泉浴衣は、かつては素肌の上に直接着るのが風習でした。しかし、現代の温泉旅館における実態検証および宿泊客アンケート調査では、「上下とも下着を着用して過ごす」と回答した利用者が全体の91.4%に達しています。現代の浴衣生地は薄手の綿素材が多く、特に明るい色味の浴衣や色浴衣では、光の当たり具合によって身体のシルエットや下着の線がはっきりと透けてしまいます。
女性の場合、ワイヤー入りブラジャーはリラックスを妨げるため、ノンワイヤーブラ、ブラトップ、和装用インナー、またはキャミソールの着用が推奨されます。ショーツもラインが響きにくいシームレスタイプや、透けにくいベージュ系の色合いを選ぶのが大人のエチケットです。男性の場合も、汗染みや胸元の開きを防止するため、VネックのインナーTシャツやトランクス・ボクサーパンツを身に着けるのが現在のスタンダードです。
また、浴衣姿で外出する際の行動範囲についても明確な境界線が存在します。
城崎温泉(兵庫県)や草津温泉(群馬県)、渋温泉(長野県)のように、街全体を「一つの大きな宿」と見立てて外湯巡りを推奨している伝統的な温泉街では、浴衣・羽織・下駄のまま温泉街の通りや飲食店へ出かけることが文化として推奨されています。一方で、都市型のリゾートホテルや高原の温泉リゾートでは、「浴衣・スリッパでの移動は客室と大浴場の往復のみ」「メインダイニングやロビーラウンジへの浴衣での立ち入りは不可」と規定されている施設が少なくありません。客室内のインフォメーションブックやフロントでの事前確認を怠らないことが肝要です。