映画『人間失格』二階堂ふみ狂気の怪演!太宰を呑み込んだ熱演の裏側

映画『人間失格』二階堂ふみ狂気の怪演!太宰を呑み込んだ熱演の裏側

映画『人間失格』二階堂ふみ狂気の怪演!太宰を呑み込んだ熱演の裏側の見逃せないポイントを一挙に解説しました。

映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』において、観客の心に最も不穏で鋭利な爪痕を残すのが、二階堂ふみ演じる山崎富栄という実在の女性です。富栄は、日本初のパーマ技師としても知られたキャリアウーマンでありながら、戦死した夫への貞操とクリスチャンとしての道徳観を持つ、極めて生真面目な人物でした。しかし、太宰治(小栗旬)との出会いが、彼女の運命を狂わせていきます。

二階堂ふみが本作のオファーを引き受けた背景には、蜷川実花監督からの熱烈なラブコールと、脚本に描かれた富栄の多面的な業(ごう)への強い関心がありました。当時の映画完成披露プレミアや公式インタビューの記録によると、二階堂は「富栄さんは純粋すぎたがゆえに、太宰という毒にすべてを捧げてしまった女性。ただの狂気的な悪女ではなく、一人の女性が抱える哀しみと一途さを丁寧に掬い取りたかった」と役作りの理由を告白しています。

劇中における二階堂の演技は、まさに圧巻の一言に尽きます。序盤で見せる、眼鏡をかけ、言葉遣いも丁寧で伏し目がちな「貞淑な未亡人」の佇まいから、太宰の口車に乗せられて身体を重ねて以降の表情の変貌は、観る者を凍りつかせます。不貞への強い自己嫌悪に怯えながらも、太宰への想いが歯止めを失い、「先生の最後の女になりたい」「私と死んでください」と迫る目つきには、理性のタガが外れた人間の凄みが宿っていました。

特筆すべきは、太宰を追い詰めていく際の「声のトーン」の変化です。二階堂は当初の柔らかく控えめな発声から、終盤にかけて低く湿り気を帯びた執着のトーンへとシフトさせています。太宰が結核の喀血に苦しみ、精神的にも追い詰められる中、献身的な看病の仮面を被りながら彼を心理的に孤立させていく様は、まさに映画史に残る「怪演」と呼ぶにふさわしい仕上がりとなりました。

森 瞳
著者

森 瞳

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