格子戸を抜け大広間へ進むと、まず目を奪われるのが光の演出だ。過剰な照明を一切排除し、自然光の移ろいだけで表現される空間は、まさに谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』の世界観を彷彿とさせる。磨き上げられた廊下には庭園の緑が鏡面のように映り込み、昼から夕刻にかけて色彩が刻一刻と移り変わる。
職人の手仕事が息づく銘木、緻密に組み上げられた組子細工、そして手漉き和紙を通したやわらかな光。無駄を極限まで削ぎ落とした静寂の構造美は、見る者の心を深く落ち着かせる。時代の波に流されることなく磨き抜かれてきた空間のありようが、ここには確実に存在する。