酸化チタンのリスクを正しく理解する上で不可欠なのが、「体内にどのように入るか」という曝露経路の区別である。国際がん研究機関(IARC)は、酸化チタンを「ヒトに対して発がん性がある可能性がある」(グループ2B)に分類している。しかし、この分類の根拠となった実験データの大半は、大量の粉塵を「吸入」した動物実験によるものだ。
製造現場などで微小な酸化チタン粉末を長期間にわたり吸い込んだ場合、肺に粒子が蓄積し、慢性的な炎症を引き起こすことで腫瘍が形成されるリスクが指摘されている。つまり、最も警戒すべきは粉末状態での「吸入毒性」なのだ。
一方で、食品として「経口摂取」した場合の挙動は異なる。腸管から吸収される微粒子の割合はきわめて低いとされるが、EFSAが問題視したのは、ナノサイズ(100ナノメートル未満)の微小粒子が体内に蓄積し、細胞のDNAに損傷を与える可能性を完全には排除できない点であった。