かつて昭和から平成初期の民間療法では、「肩が痛くても我慢してグルグル回さないと関節が固まってしまう」という根性論が半ば公然と信じられていました。しかし、NHK『ためしてガッテン』が整形外科の第一線で活躍する専門医への取材を通じて白日の下に晒した事実は、その常識を真っ向から否定するものでした。番組が強調したガッテンにおける肩関節周囲炎の理由は、肩の関節を包む袋状の組織である「関節包」や周辺の腱板に生じた急性の微小断裂と激しい炎症です。
加齢に伴って肩関節周囲の血管床が減少し、柔軟性を保っていたコラーゲン線維が変性して脆くなります。そこに日常の些細な動作が加わることで微細な損傷が生じ、火災現場のように炎症が燃え広がります。この初期段階で「固まらないように」と腕を強引に引き上げたり、痛みをこらえて腕を回したりすることは、燃え盛る炎に油を注ぎ、傷口を無理やり引き裂いて広げる行為に他なりません。
現場の整形外科医や理学療法士の臨床証言によると、激痛を我慢してストレッチを続けた結果、関節包の炎症が広範囲に波及し、最終的に関節包全体が分厚く線維化して縮む「癒着性関節包炎(フローズンショルダー)」へと進行してしまった患者が多数報告されています。痛みの段階を見誤り、力任せに動かすことこそが、回復を何ヶ月も遅らせる最大の引き金だったのです。