円盤餃子のルーツを辿ると、激動の昭和20年代へと行き着きます。ふくしま餃子の会が公開している歴史資料や当時の証言によると、福島市は戦災による壊滅的被害を免れたため、終戦直後から駅周辺に活気ある闇市が形成されていました。旧満州(現・中国東北部)から復員・引き揚げてきた人々が、生活の糧を得るために本場で覚えた餃子の屋台を開いたことがすべての始まりです。
当時、狭小な屋台で使える熱源は限られており、調理器具も丸いフライパンしかありませんでした。そこで、一度にできるだけ多くの餃子を均一に焼き上げるため、フライパンの円形に沿ってぎっしりと敷き詰めたのが、あのダイナミックな焼きスタイルの起源です。焼き上がったフライパンに丸皿をかぶせ、一気にひっくり返して提供する手法は、限られた空間から生まれた生活の知恵でした。
この福島円盤餃子の発祥と歴史において欠かせない存在が、1953年(昭和28年)創業の「満腹」です。初代店主が考案したこの焼き方は瞬く間に評判を呼び、市内の同業者へと波及していきました。現在では福島餃子の会加盟店マップに名を連ねる十数軒の専門店をはじめ、市内各地で個性豊かな円盤餃子が提供されています。2021年度には文化庁の「100年フード(伝統の100年フード部門)」に認定され、地域の誇るべき食文化遺産として揺るぎない地位を確立しました。