規制線の向こう側で繰り広げられる作業は、静寂と異臭が入り混じる独特の緊張感に満ちている。変死体の発見通報が入ると、司法警察員としての権限を持つ捜査官が即座に現場へ急行する。現場に足を踏み入れた瞬間から、時計の針との戦いが始まる。死後硬直の進み具合、死斑の出現位置、直腸温の測定。これら基礎データの収集は一刻を争う。
「遺体は嘘をつかないが、向こうから語りかけてもくれない。こちらから痕跡を読み取りにいくしかない」と、あるベテラン捜査官は語る。首筋に残されたわずか数ミリの表皮剥脱、爪の間に挟まった微細な繊維。肉眼では見落としそうな些細な痕跡が、他殺の動かぬ証拠となる。事件性の有無を見極める現場の緊迫感は、テレビ画面越しに伝わるドラマの比ではない。