このスタジアムの芝には、幾多の汗と悔し涙が染み込んでいる。主役としてピッチを駆けるのは、地域に根ざした名門クラブであるFC刈谷だ。日本フットボールリーグ昇格を懸けたし烈な戦い、そして東海社会人サッカーリーグでのしのぎを削る攻防戦において、このホームスタジアムは数々のドラマを演出してきた。
記憶に新しいのは、元日本代表DFの茂庭照幸がピッチ内外でチームを牽引していた時期の熱狂だ。ワールドカップの舞台を経験したベテランが最後尾から響かせる野太いコーチングの声は、スタンドの最上段までダイレクトに届いた。Jリーグの巨大アリーナではアンプ越しの応援にかき消されがちな「選手の生の声」や「激しいボディコンタクトの衝突音」が、観客の鼓膜をダイレクトに震わせる。これこそが、この場所でフットボールを観る最大の醍醐味である。