女優・前田敦子の真価が世に広く知れ渡るきっかけとなった作品の一つが、堤幸彦監督による映画『イニシエーション・ラブ』だ。一見すると80年代を舞台にした甘酸っぱい青春ラブストーリーでありながら、ラストで世界観が暗転するこの痛快なサスペンス作品において、彼女はヒロイン・マユ役を熱演。可愛らしさの裏に潜む冷徹な罠を見事に演じ分け、観客と批評家を唸らせた。
単なるアイドル女優の枠組みを打ち破った彼女は、その後も重厚なヒューマンドラマからエキセントリックな異色作まで果敢に挑戦を重ねる。日本映画の巨匠たちから「カメラの前に立つだけで物語が生まれる」と絶賛される稀有な佇まいは、数々の困難な役柄を通して研ぎ澄まされていった。