彼の真骨頂は、ジャンルを軽々と飛び越えるカメレオンのような柔軟性にある。冷酷無比な犯人や怪しげなフィクサーを演じるサスペンスドラマでは、背すじが凍るような冷徹な笑みを浮かべて観客を戦慄させる。一方で、人生の挫折に苦しむ父親や不器用な職人を演じるヒューマンドラマでは、涙を誘う温もりと切なさを全身から醸し出す。
日本のテレビドラマという制約の多い表現の場で、これほどまでに振り幅の広い演技を見せられる役者はごく稀だ。型にハマった記号的な演技を嫌い、常に「その人間がその場で本当に息をしているか」を自問自答し続ける。画面の隅に映り込んでいるだけのシーンであっても、彼の細やかな仕草一つで物語の奥行きが一気に深まるのだ。