「悪魔のキューピー(英語圏では主に『Devil Kewpie / デビルキューピー』)」の正体を探るには、まずキューピーというキャラクターそのものの歴史を遡る必要があります。オリジナルのキューピーは、1909年にアメリカのイラストレーターであるローズ・オニール(Rose O'Neill)によって生み出されました。ローマ神話の愛の神「クピド(キューピッド)」をモチーフにした、人々を幸せにする愛の使者としての造形です。
この無垢と善意の象徴であったキューピーを「悪魔化」させた元ネタは、1930年代から1950年代にかけてアメリカの船乗りたちを中心に発展したトラディショナル・タトゥー文化(オールドスクールタトゥー)にあります。伝説的彫師ノーマン・“セーラー・ジェリー”・コリンズらをはじめとするタトゥーイストたちが、フラッシュアート(絵柄のサンプル)として「天使のキューピーに悪魔のツノ、蝙蝠の羽、ピッチフォーク(槍)」を描き加えたことが直接の発端とされています。
その名前の由来は極めて直球であり、「悪魔(Devil)の姿をしたキューピー(Kewpie)」という外見的特徴をそのまま日本語訳したものです。純真無垢の代名詞をあえてダークサイドに堕とすという、アメリカンカウンターカルチャー特有のブラックユーモアとアイロニー(風刺精神)が結実したシンボルといえます。