福岡6区補選が単なる地方選挙にとどまらず、全国ニュースのトップを連日飾り続けた理由は、自民党中央における激しい権力闘争の舞台装置となったためです。
倉内謙氏の父親である倉内勇夫氏は、自民党福岡県連会長や日本獣医師会会長を歴任した屈指の実力者であり、麻生太郎副総裁(当時)と極めて近しい関係にありました。県連は即座に謙氏の公認申請を行い、麻生氏の後押しを武器に中央へ迫りました。
これに対し、鳩山邦夫氏の次男で元大川市長の実績を持つ鳩山二郎氏側には、当時の菅義偉官房長官や二階俊博幹事長が水面下で肩入れしました。「勝てる候補を立てるのが選挙の鉄則」とする党本部執行部と、「地方組織の手続きを無視するな」と反発する県連執行部が真っ向から衝突。党本部は最終的に両者の公認を見送り、「勝った方を追加公認する」という苦肉の策をとったのです。
結果は鳩山二郎氏の圧勝に終わり、倉内陣営は中央政界の権力ゲームに巻き込まれる形で手酷い敗戦を余儀なくされました。地方の強固な組織力であっても、有権者の「判官贔屓」や「弔い感情」を押し切ることはできないという現実を、日本政界に強烈に印象づけた選挙戦でした。