和歌山ラーメンの骨格を成す豚骨醤油ラーメンは、製法と味の設計思想によって大きく2つの系統に大別されます。この分類を理解せずに暖簾をくぐると、「想像していた味とまったく違った」というミスマッチを起こしかねません。
第1の潮流が、全国的な知名度を牽引した井出系(濃厚豚骨醤油)です。発祥店である井出商店の店主が、豚骨スープを煮込みすぎて偶然白濁させてしまった失敗から生まれたと伝えられています。豚骨を強火で長時間炊き出し、骨の髄からゼラチン質と旨味を徹底的に抽出。そこに濃口醤油ダレを合わせることで、茶濁したとろみのあるスープが完成します。口に含んだ瞬間に広がるパンチのある獣感と、まろやかなコクが最大の特徴です。
対する第2の潮流が、屋台文化をルーツに持つ車庫前系(醤油先行・清湯豚骨)です。かつて和歌山県を走っていた路面電車(南海和歌山軌道線)の車庫周辺に屋台が軒を連ねていた歴史に由来し、その代表格が丸高中華そばです。こちらは豚骨をあらかじめ醤油ダレでじっくり煮込み、その煮汁をベースに豚骨スープで割る製法を採用しています。スープは濁りが少なく、醤油のキレと香ばしさが前面に押し出された、後味すっきりのノスタルジックな味わいに仕上がります。