物語が最終局面を迎える『無限城編』のプロローグにおいて、お館様は読者の予想を遥かに超える冷徹かつ壮絶な決断を下します。鬼舞辻無惨がついに産屋敷邸の居場所を突き止め、耀哉の寝所に現れた夜のことです。
病によって骨と皮ばかりになり、盲目となった耀哉は、無惨と穏やかに言葉を交わしながら時間稼ぎを行いました。そして、無惨が油断した刹那、妻のあまね、長女のひなき、次女のにちかと共に、屋敷ごと大量の火薬で自爆したのです。
この爆破は単なる自暴自棄ではありません。無惨の再生能力を限界まで遅らせるため、撒菱(まきびし)を火薬に混ぜて肉体をズタズタに引き裂き、直後に潜ませていた珠世が「鬼を人間に戻す薬」を撃ち込むための布石でした。自らの命はおろか、愛する妻子をも巻き込むその苛烈な覚悟に対し、無惨すらも「産屋敷は完全に狂っている」と戦慄を覚えるほどでした。
自らの死を最強の罠として機能させ、悲願であった無惨討伐への道を切り拓いたこの瞬間こそ、産屋敷耀哉という指導者の真骨頂と言えます。