より丁寧に伝えようとするあまり、「おいとまさせていただきます」という表現を多用するケースが見受けられます。しかし、ここには敬語運用の観点から知っておくべき盲点が存在します。
「〜させていただく」という使役と恩恵の表現は、文化庁の『敬語の指針』においても「相手の許可を得て、そのことによって自分が恩恵を受ける関係性」において成立すると定義されています。退席という行為は、長居によって相手の時間を奪うことを防ぐ配慮でもあるため、相手の許可を過度に強調する「させていただきます」は、人によっては慇懃無礼(丁寧すぎてかえって嫌味)に聞こえるリスクを孕んでいます。
違和感を持たれずに敬意を高めたい場合は、「そろそろおいとまいたします」「長居をしてしまい恐縮です。そろそろ失礼いたします」と、謙譲語「いたす」を用いてシンプルに伝えるのが、もっともスマートで洗練された語法です。