有事の安全資産と呼ばれる金(ゴールド)ですが、今回の記録的暴騰は単一の事件による一時的なスパイクではありません。複数の世界的要因が同時に作用した結果、相場の底上げが続いています。
第1の要因は、世界各国の中央銀行による継続的な金買い増しです。世界黄金協会(WGC)の公式統計によると、中国やインド、新興国の中央銀行は米ドル依存からの脱却(脱ドル化)を進めており、外貨準備としてのゴールド保有比率を年々引き上げています。公的機関による巨大な買い支えが、価格の下値を強固に固めています。
第2の要因は、長期化する地政学的緊張とインフレ圧力です。中東情勢の緊迫化や地域紛争の泥沼化に伴い、国債や法定通貨に対する信用リスクが再認識されました。「発行主体の破綻リスクが存在しない実物資産」としての金に、世界中の機関投資家マネーが逃避しています。
第3の要因は、国内特有の「為替相場(円安水準)」の影響です。国際的な金取引は米ドル建てで行われるため、ドル高・円安が進むと日本国内の円建て金価格は二重で押し上げられます。ドル建て価格が小動きであっても、為替の影響だけで国内小売価格が連日最高値を更新する現象が起きています。
第4の要因として見逃せないのが、金の採掘コスト上昇と供給限界です。主要鉱山での品位低下や環境規制強化により、新たに1オンスの金を掘り出すための総合維持コスト(AISC)が大幅に跳ね上がっています。供給が増えにくい構造が、価格を下支えする決定的な根拠となっています。