芥見下々の原作コミックにおける該当シーンは、研ぎ澄まされたコマ割りと無駄を削ぎ落とした白黒のコントラストによって、乾いたリアリズムを生み出していた。突如として訪れる死の暴力性が、冷徹なスピード感で描かれている。
対して、映像化を手掛けた株式会社MAPPAのアプローチは極めて詩的でドラマチックだった。破壊し尽くされた渋谷の暗澹たる廃墟と、七海の脳裏に広がるクアンタンの眩い白砂とエメラルドグリーンの波。アニメーション表現ならではのカットバック演出が、現実の残酷さを倍加させる。
足元を滑るステップの軽やかさと、現実に引きずり戻された際の肉体の損壊。鮮烈な色彩の対比と環境音のフェードアウトを巧みに操り、視聴者を七海の主観世界へと没入させた手腕は、世界中のアニメ評論家からも絶賛を浴びた。