1980年代前半、NHKの「連続テレビ小説」枠で放送された『おしん』は、最高視聴率62.9%という前代未聞の記録を打ち立てた。だが、その企画立ち上げの段階では、局内から強い難色が示されていたという。貧困と不屈の精神を描く重厚なテーマが、朝の爽やかな時間帯になじまないのではないかという懸念があったからだ。
脚本を手がけた橋田壽賀子は、自身の戦中・戦後の実体験と綿密な取材をもとに、妥協のないリアルな人間像を描き切った。貧しさに耐えながらたくましく生きるおしんの姿は、日本国内にとどまらず世界数十カ国で放映され、世界的な社会現象へと発展した。テレビドラマが持つ「国境を超える力」を世界に知らしめた金字塔である。