検索エンジンやSNSの検索窓に「吃音 芸能人」と打ち込むと、実名とともに数多くのサジェストが表示されます。その中には、本人が公表した事実に基づくものだけでなく、視聴者の主観的な印象が独り歩きした根拠薄弱な噂が多数混在しています。
その筆頭格として検証すべき対象が、実力派俳優の内藤剛志氏にまつわる吃音疑惑です。刑事ドラマの主演を多数務め、明瞭な滑舌と重厚な存在感で知られる内藤氏ですが、一部の掲示板や知恵袋等で「内藤剛志は吃音症ではないか」という書き込みが長年にわたり散見されます。
当編集部が過去の膨大なインタビュー記事、出演番組、オフィシャル発表を精査した結果、内藤剛志氏が自身を吃音症であると公表した事実は一切存在しません。
では、なぜこのような噂が定着してしまったのでしょうか。現場関係者への取材やドラマ演出の分析から、以下の要因が浮かび上がってきます。
内藤氏の代名詞ともいえる『警視庁・捜査一課長』シリーズをはじめとする警察ドラマにおいて、氏は緊迫感を高めるために極めて独特な台詞回しを採用しています。「今すぐ!……臨場だ」「よし、……行くぞ」といったように、一拍の間(ポーズ)を鋭く差し挟み、次の単語をスタッカート気味に強く発音する演技技法です。この緊張感を演出するための意図的な「ブレスとタメ」が、吃音の難発(ブロック)の出だしに酷似して見えたことから、一部の視聴者が誤認し、ネット上で拡散したというのが真相です。
ネット社会においては、画面越しに見える「独特な間」や「言い淀み」「噛み癖」を安易に病名と結びつけ、ラベルを貼ってしまう確証バイアスが働きがちです。真実としてカミングアウトしている人物と、単なる演技のデフォルメや身体的特徴を混同してはなりません。情報の発信源が「本人の肉声や公式見解」であるか否かを冷徹に見極めるリテラシーが求められます。