ファンブルの語源と英語表現を遡ると、英語の動詞「fumble」に突き当たる。英和辞典においてfumbleは「手探りする」「不器用にいじる」「(ボールなどを)つかみ損なう・取り落とす」「しくじる」といった意味を持つ。これが近代スポーツの発展とともに、ボールハンドリングのミスを表す競技規則上の専門用語として確立されていった。
アメフトにおけるファンブルの定義は極めて厳格かつ重い意味を持つ。アメリカンフットボール公式規則において、ファンブルとは「ボールを完全に保持(ポゼッション)しているプレーヤーが、パスやキック、ハンドオフ以外の要因でボールの確保を失うこと」を指す。地面にボールが転がった瞬間、ボールは「フリーボール」となり、敵味方を問わず誰でも確保(リカバー)できる状態になる。守備側にボールを奪われれば「ターンオーバー」となり、一瞬にして攻守が入れ替わる。1プレーで勝敗の天秤が完全に傾くため、アメフトにおけるファンブルは最も警戒される重大インシデントの一つだ。
一方、野球やソフトボールにおけるファンブルは、野手が打球や送球を捕球しようとした際にグラブに当てながらも取り落とす、いわゆる「お手玉」の失策を指す。野球指導の現場や専門メディアの解説資料でも、ファンブルは捕球時の腰の高さやグラブの差し出し方に起因する基礎的エラーとして分析されている。なお、類似の球技であるラグビーでは、ボールを前方に落とす行為は「ノックオン」という反則行為(ペナルティ)に分類され、用語の棲み分けがなされている。
この「手元にあった確実なコントロールを失い、取り返しのつかない窮地に陥る」というスポーツの緊張感に着目したのが、1970年代から80年代にかけて黎明期を迎えていたテーブルトークRPGのゲームデザイナーたちだった。ダイス(サイコロ)の出目によって予測不能な劇的展開を生み出すシステムとして、ゲーム用語ファンブルの真相たる「単なる失敗を凌駕する破滅的エラー」という概念がルールブックへと組み込まれていった。