名古屋市内でもトップクラスの敷地面積を誇るmozoワンダーシティに、なぜシネコンが誘致されなかったのでしょうか。その背景には、商業戦略上の明確な理由が存在します。
第1の理由は、テナント構成と空間効率の最適化です。シネコンを設置するには、複数スクリーンを確保するための広大な専有面積と吹き抜け構造の高い天井高が必要となります。mozoワンダーシティは2009年の全面建て替えオープン時、シネコンを配置するスペースを、回転率と集客力の高い大型ファッション旗艦店やライフスタイル雑貨、大型フードコート、ペット専門店などに充てるフロア設計を選択しました。日常使いからトレンド消費まで幅広い世代が回遊できる空間づくりを最優先した結果です。
第2の理由は、近隣の既存シネコンとの競合回避(カニバリゼーション防止)です。mozoが誕生した前年の2008年、直線距離で約7km北東に位置する「エアポートウォーク名古屋」内に12スクリーンを備えた「ミッドランドシネマ名古屋空港」が開業しました。さらに名古屋駅周辺のシネコン群とも商圏が重なるため、あえて莫大な投資をしてシネコンを競合させる必要性が薄かったという判断が働いています。
第3に、名古屋市西区・上小田井という交通アクセスの利便性が挙げられます。名鉄犬山線と地下鉄鶴舞線が乗り入れる上小田井駅至近という立地により、映画館へ行きたい利用客は電車でわずか約10分の名古屋駅エリアへスムーズに移動できます。施設単体ですべてを完結させるのではなく、周辺インフラとの住み分けが図られた結果と言えます。