ミイラの本場であるエジプトでも、偽物の歴史は数百年前にさかのぼります。特に19世紀のヨーロッパで巻き起こった「エジプト狂(エジプトマニア)」の時代、貴族や裕福な旅行者の間でミイラ収集が大流行し、需要が供給を圧倒的に上回る事態が発生しました。
現地のアラブ人商人や偽造業者たちは、中世の墓地から掘り出した身元不明の遺体や動物の死骸にアスファルト(ピッチ)を塗りたくり、古びた麻布で何重にも巻いて「古代ファラオ時代の高官」として売りさばきました。中には木くずや粘土を布で人間型に包んだだけの完全な張り子細工も横行していました。
現在におけるエジプトミイラの偽物の見分け方は、主に以下のポイントに基づいています。
- 包帯の巻き方と布の材質:本物の古代ミイラは高品質な亜麻布(リネン)が緻密に幾何学模様を描くように巻かれていますが、偽物は粗悪な綿布や近代の染色技術で古色をつけた布が使われているケースが目立ちます。
- 防腐剤の化学組成:本物は天然のナトロン(天然炭酸ソーダ)や植物性樹脂、蜜蝋などが使われますが、近代の偽物はコールタールや石油由来のピッチが多用されています。
- X線透過像の解剖学的整合性:外観は立派な人型であっても、内部を撮影すると複数の異なる人間の骨が混ざっていたり、骨格自体が存在しなかったりする点で見破られます。