合同会社最大の利点とされる「柔軟でフラットな経営」は、裏を返せば組織崩壊を引き起こす最大の火種になり得ます。特に友人間やビジネスパートナー同士など、複数人で対等に出資して合同会社を興すケースには致命的な構造的リスクが潜んでいます。
「1人1票」が招くデッドロックの恐怖
株式会社の意思決定は「持ち株比率」で決まります。仮に創業者Aが80%、共同創業者Bが20%を出資した場合、議決権は出資比率に応じるため、意見が衝突しても過半数を持つAが最終決定を下して会社を前進させられます。
しかし、合同会社は定款で別段の定めをしない限り、「出資金額に関係なく、社員1人につき議決権は1票」と会社法で定められています。例えばAが990万円、Bが10万円を出資して資本金1,000万円で設立したとしても、2人の意見が対立すれば「1対1」の同数となり、業務執行の決定が完全に麻痺(デッドロック)します。この落とし穴を知らずに設立し、事業拡大の重要な局面で方針を巡って激突、会社が機能不全に陥った末に解散へと追い込まれる悲惨な事例が後を絶ちません。
退社に伴う「出資持分の払戻し」という爆弾
仲間割れが起きた際の清算プロセスも、株式会社よりはるかに過酷です。株式会社の場合、辞める共同創業者から創業者個人が株式を買い取るのが一般的です。しかし合同会社では、退社する社員に対して「会社自身がその持分を払い戻す」のが原則となります。
会社の純資産が増加しているタイミングで共同創業者が離脱を要求した場合、会社は多額のキャッシュを「持分の払戻し」として吐き出さなければなりません。このキャッシュアウトによって資金繰りが一気にショートし、黒字倒産の危機に瀕するリスクすらあります。複数人で合同会社を立ち上げるのであれば、定款において「業務執行権と代表権を特定の社員に集中させる」「持分の払戻しに関する厳格な算定基準を設ける」といった綿密な法的手当てが絶対に欠かせません。