壇ノ浦の戦いに敗れた平家の一門が、追手から逃れ、身を潜めたとされる湯西川温泉。この地には今も、端午の節句に鯉のぼりをあげない、鶏を飼わないといった、敵に居場所を知らせないための独特な風習が息づいている。歴史の教科書でしか見たことのなかった「平家落人」のリアルな息遣いが、令和の今もこの谷底には漂っているのだ。
近年、過度な観光地化を避ける「サステナブル・ツーリズム」が世界的な潮流となる中、湯西川はその孤立した地理的条件ゆえに、奇跡的に手つかずの自然と文化を守り抜いてきた。ただ消費されるだけの観光地とは一線を画す、本物の歴史ロマンがここにはある。