発見の舞台となったのは、観光客で賑わうエリアから少し外れた場所に位置する、非公開の禅寺だ。築400年を超える本堂の耐震補強工事に伴い、内壁を取り外したところ、強固に密閉された二重壁の空間が現れた。その奥にひっそりと安置されていたのが、全12面に及ぶ壮大な障壁画である。現場の作業員は「壁の裏にさらに空間があることに気づいた瞬間、肌が粟立つような緊張感が走った」と当時を振り返る。
通常、こうした古い寺院の改修では予期せぬ遺物が見つかることは珍しくない。しかし、これほど大規模かつ意図的に隠されたとみられる美術品が、無傷に近い状態で発見されるのは極めて異例だ。意図的に隠蔽された背景には、戦火や明治期の廃仏毀釈から守るための、当時の住職たちの必死の決断があったと考えられている。