現在でも一部のライト層からは、「倖田來未は『Butterfly』のセクシー路線だけでブレイクした一発屋的な存在ではないか」という偏った見方が語られることがあります。しかし、これは音楽的・客観的事実から大きく乖離した誤解です。
第1に、彼女の音楽的基礎体力の高さです。彼女はもともとオーディションを勝ち抜いてデビューした実力派であり、リズム感の正確さやソウルフルな発声技術は、当時のエイベックス所属アーティストの中でもトップクラスでした。『Butterfly』以前にも『real Emotion』や『キューティーハニー』などで確実なヒットを刻んでおり、下地のない突発的なブームでは決してありませんでした。
第2に、楽曲自体の音楽的完成度です。渡辺未来氏の手がけたコードワークは、単調なダンスミュージックに陥らず、マイナーコードからサビでのダイナミックな転調を巧妙に配置し、日本人の琴線に触れる歌謡曲的哀愁を巧みに残しています。この緻密な楽曲構造があったからこそ、単なる流行歌で終わらず、20年以上歌い継がれるスタンダードナンバーとなり得たのです。