溶連菌感染症は5〜15歳の小児に最も好発しますが、免疫力が低下している大人や、感染した子どもを看病する親への家庭内感染も極めて頻繁に見られます。ここで注意すべきは、子どもの初期症状と大人の初期症状では現れ方に顕著なギャップが存在する点です。
子どもの場合、喉の痛みを言葉で的確に表現できない年齢層では、まず「お腹が痛い」「気持ち悪い」といった消化器症状から始まる例が珍しくありません。感染に伴う腸間膜リンパ節の腫れによって突発的な嘔吐や腹痛が起こり、小児科医が喉を覗いて初めて溶連菌による咽頭炎だと判明するケースが日常茶飯事です。発症後2〜3日目には、舌の表面の苔が剥がれ落ちて赤いブツブツが目立つ「イチゴ舌」が現れたり、首筋、胸元、脇の下などに痒みを伴う細かな赤い発疹(溶連菌発疹・猩紅熱様皮疹)が砂粒のように広がったりします。
一方、大人の初期症状は大半が「極度の倦怠感と喉の化膿」です。大人は過去の感染経験から部分的な免疫を有している場合があり、その影響で「熱が出ない初期症状」や37度台の微熱にとどまる非典型例が散見されます。熱が高くないからと出勤を続けたり、市販の鎮痛薬で痛みを麻痺させて過ごしたりした結果、気付かぬうちに職場や保育園の送迎先で感染を広げてしまう構造的な罠が存在します。