大衆的なポップスとしての親しみやすさを持ちながら、音楽評論家や玄人筋をも唸らせたのが、極めて高度な音楽的構築美です。星野源は自著やラジオ番組『星野源のオールナイトニッポン』の中で、本作の制作秘話として「細野晴臣氏が提唱したイエロー・ミュージック(ブラックミュージックと日本の歌謡曲の融合)を、自分なりの現代的ポップスとして完成させたかった」と語っています。
モータウン・ビートを基調とした跳ねるリズム隊(ドラム:河村"カースケ"智康、ベース:伊賀航)に、長岡亮介(ペトロールズ)のファンキーなギターカッティング、そしてイントロを印象づける中国の伝統楽器「二胡」のエキゾチックな音色が重なります。この異種交配こそが、聴く者に唯一無二の躍動感をもたらしました。
音楽理論の観点から星野源『恋』のコード進行を分析すると、基本はJ-POPの王道である「王道進行(IV - V - IIIm - VIm)」やカノン進行をベース敷きながらも、随所にソウルミュージック由来のセカンダリー・ドミナントやテンションコード(9thや13th)が緻密に配置されています。サビで一気に視界が開けるような高揚感は、緻密な転調テクニックとベースラインのスムーズな進行計算によって生み出されているのです。
この音楽的挑戦は、2018年に発表され各チャートを席巻したメガヒットアルバム『POP VIRUS』の中核を担うピースとなり、日本のポップスシーンに新たな地平を切り拓きました。