サーナイトやマスカーニャがファン側の文脈によって「エロい」「可愛い」と解釈された側面が強いのに対し、開発陣が明確に「フェロモン」「官能」を生態の核として据えたのが、サン・ムーンに登場したフェローチェとエンニュートです。
エンニュート:逆ハレムとフェロモンによる支配の生態学
トカゲをモチーフにしたエンニュートは、ポケモン生態学の中でも異色の存在です。進化前のヤトウモリはオスとメスが存在しますが、メスしか進化できません。ゲーム内の図鑑説明には以下のように記されています。
「フェロモンガスを 出して オスの ヤトウモリを 引き連れて ハーレムを つくる。 オスたちは 言いなりだ。」(『ポケットモンスター サン』公式図鑑より)
オスのヤトウモリはエンニュートに貢ぎ物を運ぶために栄養失調になり、進化すらできないという徹底した搾取構造。このダークで背徳的な設定と、細い腰をくねらせて妖艶に歩く専用モーションが組み合わさったことで、エンニュートはポケモンの「大人の色気」枠として唯一無二のポジションを確立しました。
フェローチェ:ゴキブリ×スーパーモデルという極限のデザイン
異世界から現れる謎の存在「ウルトラビースト(UB)」のコードネーム「UB02 BEAUTY」として登場したフェローチェ。そのモチーフは驚くべきことにワモンゴキブリです。誰もが忌み嫌う害虫をベースにしながら、ハイヒールを履いたパリコレモデルのような細長い手足、純白のドレスのような翅、長いまつげを思わせる触覚を融合させました。
「この世のあらゆる生物を魅了し、敵意を失わせるフェロモンを放つ」という設定は、嫌悪と魅惑が表裏一体であることを突き詰めた現代アート的な挑戦作であり、ポケモンデザインの奥深さを証明するモニュメントといえます。