検索エンジンで明和地所と入力した際、今なお「倒産」という不吉なサジェストが表示される理由には、2008年の世界金融危機(リーマンショック)が色濃く影を落としています。当時、急拡大を続けていた新興不動産デベロッパー(アーバンコーポレイション、日本綜合地所、ジョイント・コーポレーションなど)が次々と経営破綻に追い込まれました。中堅上場デベロッパーであった同社も株価が乱高下し、市場で「次はどこが危ないのか」という疑心暗鬼が渦巻く中で倒産リスクが囁かれた経緯があります。
同社はこの危機的な不動産不況をリストラや不採算事業の圧縮によって乗り越え、法的手続きを取ることなく完全な自力再建を果たしました。倒産という事実は過去一度として存在しないにもかかわらず、当時の金融市場のパニックの記憶がネット上の言説として断片的に残り続け、現代の検索ユーザーを誤解させています。
また、同社の歴史を語るうえで避けて通れないのが、2000年代初頭に大きな社会問題となった「国立マンション訴訟」です。東京都国立市のメインストリートである大学通り沿いに計画された「クリオ文教国立」を巡り、景観権の侵害や高さ制限条例との整合性を巡って周辺住民・自治体と激しい法廷闘争へ発展しました。最終的に最高裁判所は、住民側の景観利益に配慮しつつも、法令の範囲内で行われた明和地所側の建築行為自体の違法性を退け、損害賠償責任を否定する判決を下しました。
法的には勝訴したものの、企業イメージへの打撃は計り知れないものがありました。この痛烈な経験は、その後の同社の開発思想を根底から変える契機となっています。近隣住民への丁寧な事前説明会の開催、圧迫感を低減するセットバック設計、周辺景観と調和するアースカラーの外観デザインの採用など、地域社会との合意形成プロセスを最重視する現在の企業風土は、この歴史的教訓の上に築かれています。