性別適合手術は人体における極めて高度な再建外科手術であり、解剖学的な制約から一定確率で合併症が発生します。性別適合手術の失敗例として語られる事象の多くは、医療過誤というよりも生体反応に伴う不可避な合併症や機能的制限に起因しています。
MtF(男性から女性へ)における合併症と後遺症リスク
MtFの造膣手術(反転法やS状結腸法など)において最も過酷とされるのが、術後のダイレーション(膣拡張維持作業)です。形成した膣は生体反応によって常に収縮・閉塞しようとするため、術後数ヶ月から数年間、専用の器具を定期的に挿入し続けなければなりません。
痛みに耐えかねてダイレーションを怠った結果、膣が完全に閉塞して再手術を余儀なくされる事例や、膣と直腸の間に穴が開く「直腸膣瘻(とう)」を引き起こし、人工肛門の設置が必要となった重篤な合併症例も報告されています。さらに、尿道の短縮に伴う慢性的な尿路感染症や排尿コントロールの難しさも代表的な後遺症です。
FtM(女性から男性へ)における合併症と後遺症リスク
FtMの性別適合手術(乳腺摘出、子宮卵巣摘出、陰茎形成)では、特に陰茎形成および尿道延長手術において高い確率で合併症が発生します。太ももや前腕の皮膚・血管を移植して尿道を延長する処置は難易度が高く、術後に尿が漏れ出る「尿道瘻」や、尿道が狭まり排尿できなくなる「尿道狭窄」が頻発します。
自立排尿の獲得を目指して手術を受けたものの、度重なる修復手術によって肉体的・経済的負担が増大し、「性腺摘出と胸部手術だけにとどめておくべきだった」と後悔を口にする当事者の証言も少なくありません。