平成ドラマを語る際、ネット上ではしばしば「昔のドラマは数字が取れていたから質が高く、今のドラマは質が落ちたから見られない」という単純化された言説が飛び交います。しかし、メディア文化の検証においてこの論理は明らかな誤解です。
第1の盲点は、生活者の可処分時間の奪い合いという構造変化です。90年代当時は家庭用ゲーム機やビデオレンタルこそあったものの、YouTubeもSNSもスマートフォンも存在しませんでした。娯楽の選択肢が限られていたからこそ、テレビドラマが国民的娯楽の中心に君臨できたのであり、視聴率の多寡だけで作品自体の芸術的・脚本的優劣を単純比較することはできません。
第2の盲点は、コンプライアンスと表現の許容度です。平成初期のドラマには、現在の地上波放送基準では絶対に放映不可能な暴力シーン、性描写、喫煙・飲酒シーン、ハラスメント描写が数多く含まれていました。これらは「当時の自由闊達なエネルギー」であったと同時に、現代の視点から見返すと「倫理的に視聴に耐えない」と感じる視聴者がいることも厳然たる事実です。時代の倫理観の違いを理解した上で楽しむリテラシーが求められます。