芸能界の現場において、舌小帯の短さは「唯一無二のチャームポイント」と「職業上の障壁」という相反する二面性を抱えています。
バラエティ番組では、舌足らずな喋り方が「幼くて守ってあげたくなる可愛さ」「親しみやすいキャラクター」として歓迎される場面が多々あります。しかし、シリアスな舞台演劇や長尺のセリフが続くドラマ撮影、あるいは一音の狂いも許されないナレーションの現場では、舌の可動制限がシビアな課題として立ちふさがります。
ナレーターや声優界隈の証言でも、「舌小帯がしっかり残っている状態でも技術でカバーするプロは存在するが、舌が上顎に届かないことで特定の子音(特にサ行やラ行)に余計な力みが入り、長時間の収録で喉や舌根が疲労しやすい」という指摘がなされています。
土屋太鳳氏が過去に手術を選んだ背景にも、役者としてよりクリアな発音と豊かな声量を追求するというストイックな表現者としての矜持がありました。ただし、舌小帯切除術は「切れば即座に滑舌が劇的改善する魔法の手術」ではありません。手術で舌の可動域を広げた後、長年染み付いた舌の動かし方の癖を補正するため、言語聴覚士やボイストレーナーによる口腔筋機能療法(MFT)などの発声訓練を地道に重ねて初めて、明瞭な調音が完成します。