旧大社駅を語る上で欠かせないのが、かつて山陰本線や大社線を駆け抜けた「デゴイチ」の愛称で親しまれるD51形蒸気機関車(774号機)の存在です。
この774号機は、大社線のSLさよなら運転(昭和49年)などで実際に活躍した記念碑的車両です。駅舎の保存修理工事が始まった際、重機の搬入や工事動線の確保に伴いSLの取り扱いが懸念されましたが、出雲市と鉄道保存有志の手によって厳重な養生と定期的な点検・塗装メンテナンスが実施されてきました。大社線の終着駅ホームに佇む黒光りする巨体は、全国の鉄道ファンにとって色褪せない感動を与え続けています。
さらに、工事完了後の鑑賞ポイントとして押さえておきたいのが、駅舎随所に散りばめられた意匠の極致です。
- 宮殿風和風建築の美:神社建築の伝統を踏襲した入母屋造りの屋根、千鳥破風、重厚な懸魚(げぎょ)が旅人を威厳をもって迎えます。
- 格天井とシャンデリア:改札口や待合室の天井には格調高い「格天井(ごうてんじょう)」が施され、和風意匠の中に大正モダンを醸し出す洋風シャンデリアが下がる独特の空間美。
- 精緻な彫刻と木造改札:出札窓口や改札鋏の跡が残る木製改札口など、国鉄黄金期の原風景が奇跡的な保存状態で残されています。