では、旅行者としてこの世界最小の国を訪れる場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。世界一小さい国への行き方と入国の実態を検証すると、拍子抜けするほどの開放性と、裏腹にある厳重な警戒態勢という二面性が浮き彫りになります。
バチカン市国には空港や通常の鉄道旅客駅(貨物用引き込み線のみ存在)がありません。アクセスは極めて平易で、イタリア・ローマ市内から地下鉄A線に乗り、「オッタヴィアーノ(Ottaviano)」駅または「チプロ(Cipro)」駅で下車し、徒歩約10分で国境に到達します。イタリアとバチカンの間には国境検問所やパスポートコントロール(出入国審査)は一切設けられておらず、査証(ビザ)はもちろん、パスポートを提示することなくサン・ピエトロ広場へ足を踏み入れることが可能です。
しかし、「誰でも自由に出入りできる広場」を一歩超えると、現場の空気は一変します。現地を訪れた旅行者の証言や手記には、独特の緊張感が克明に綴られています。
「ローマの賑やかな街並みを歩いていたはずが、広場前の白い境界線を越えた瞬間、スイス衛兵の鋭い視線と空港並みのX線手荷物検査機が待ち構えていた。パスポートにスタンプは押されないが、ここが紛れもない別国家の心臓部であることを肌で実感させられる」(現地を訪れた日本人旅行者の手記より)
2026年現在の運用においても、サン・ピエトロ大聖堂やバチカン美術館に入るためには、国際テロ対策を背景とした厳格な保安検査が義務付けられています。また、肌の露出が多い服装(ノースリーブ、膝上のショートパンツ、ミニスカートなど)は宗教上の規律により入場を厳しく拒否されます。パスポートチェックがないからといって無防備に訪れると、入場口で門前払いを食らうことになるため十分な注意が必要です。