強制送還の現場において最も現実的な問題となるのが、出国にかかる費用の問題です。法律上の原則として、帰国用の航空券代や移動実費は全額本人負担(自己負担)と定められています。本人が手持ち資金を持たない場合、親族や母国の身元引受人、あるいは雇用主や知人からの送金を要請されることになります。
本人が頑なに支払いを拒否したり、資金調達が完全に不可能な状態に陥ったりした場合には、最終手段として日本政府の予算から支出される公費送還(国費送還)が執行されます。しかし、公費による送還を受けた人物のデータは入管のブラックリストに永久的に記録され、次回来日時に未払い費用の求償を求められるだけでなく、査証発給審査において極めて不利に作用します。
さらに重要なのが再入国禁止期間(上陸拒否期間)の規定です。通常の退去強制処分を受けた場合、処分の日から起算して5年間は日本への上陸が法的に拒絶されます。過去に一度でも退去強制歴がある者や、特定の刑事罰前科を持つ者が再び退去強制となった場合は、この期間が10年間へと倍増します。一方、前述の「出国命令制度」を利用して自主的に出頭した場合は、再入国禁止期間がわずか1年間に短縮されるため、不法滞在に気付いた段階で直ちに入管に出頭することが法的リスクを最小化する唯一の道となります。