九重連山の北麓、標高約1000メートルに広がるタデ原湿原。国際的に重要な湿地としてラムサール条約に登録されているこの場所は、火山地域における中間湿原として国内最大級の規模を誇る。
木道に一歩足を踏み入れると、足元にはヒゴタイやキスミレなど、大陸との陸続き時代からの遺存種が息づいている。現在、この繊細な生態系を舞台にしたエコツーリズム産業が新たな成熟期を迎えている。単なるガイドウォークにとどまらず、湿原の植生保護活動や水質調査に観光客自身が参加する「リジェネラティブ(環境再生型)ツアー」が定着し始めた。
泥炭層が気の遠くなるような時間をかけて蓄積した炭素の貯蔵庫でもあるタデ原湿原。観光による収益の一部が直接フィールドの保全と野焼きボランティアの育成へと還元される仕組みは、持続可能な地域経済のモデルケースとして機能している。