メディア業界関係者が口を揃えて指摘するのが、放映権料高騰の理由と国内テレビ局の収益構造の限界です。FIFAワールドカップの日本国内向け放映権料は、1998年フランス大会時点の約6億円から跳ね上がり、2002年日韓大会で約130億円、前回のカタール大会では推定約350億円規模にまで膨張しました。参加国が48カ国へ拡大された2026年大会では、権利費用がさらに天文学的数値に達しています。
かつてはNHKと民放各局で結成する「ジャパンコンソーシアム(JC)」が一括取得し、地上波テレビで全試合を無料中継するのが通例でした。しかし、地上波広告費の頭打ちと制作コストの削減が叫ばれる現在、数百億円に及ぶ巨額の放映権料を広告収入だけで回収することは経済合理性を完全に失っています。
この結果、莫大な資本力を持つデジタルストリーミング企業や有料スポーツプラットフォームが放映権ビジネスの主導権を握る構造へとシフトしました。欧州主要リーグやアメリカのプロスポーツ界ではすでに常識となっている「プレミアムコンテンツの有料課金モデル」が、日本のW杯中継市場にも決定的な転換点をもたらしたと言えます。