藤田まことという役者が画面に現れるだけで、作品全体に独特の奥行きとリアリティが宿る。安浦吉之助という男は、妻に先立たれ、二人の娘の成長を暖かく、時にハラハラしながら見守る父親だ。酒を愛し、情に脆く、時にヘマもする。完璧なヒーローではないからこそ、視聴者は彼に自らの姿や理想の父親像を重ね合わせた。
現場での藤田は、台本に書かれたセリフ一行のニュアンスにまでこだわり抜いた。立ち振る舞いひとつ、視線の投げ方ひとつで安浦刑事の苦悩や優しさを表現する圧倒的な役者魂。その真摯な姿勢は、娘役を演じた松岡由美をはじめ、共演したすべてのキャストに多大な影響を与えた。