カイロスの教訓を後世に定着させる大きな役割を果たしたのが、万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチです。ダ・ヴィンチが遺した膨大な手稿(ノート)の中には、古代の寓話を引用しながらチャンスの本質を書き留めた一節が存在します。
手稿には「機会(チャンス)が通り過ぎる前に、その前髪を掴め。後ろ頭には毛が生えていないのだから」という趣旨のスケッチや記述が残されており、ルネサンス期の知識人たちがいかに好機の重要性を認識していたかが窺えます。
原典を辿れば紀元前3世紀の詩人ポセディッポスがカイロス像に捧げたエピグラム(警句詩)にまで遡りますが、ダ・ヴィンチをはじめとするヨーロッパの思想家や芸術家たちがこの比喩を引用し続けたことで、時代や国境を越えて世界中で使われる不朽の名言へと昇華しました。