歴史検索で最も頻発する誤解が、「元老院のメンバー=元老」という混同です。この2つは制度的にも実態的にも全く異なります。
前述の通り、元老院は1875年から1890年まで実在した「公的な組織・役所」です。議官たちは役職に応じた俸給を受け取る国家公務員であり、法律の文案を作成するのが主務でした。
一方、元老(げんろう)は憲法や法律に一切規定のない「完全に非公式な政治的ポスト」です。明治維新を成し遂げ、首相を経験した薩長出身の重鎮(伊藤博文、山県有朋、井上馨、黒田清隆、松方正義、大山巌、西郷従道ら、後に桂太郎や西園寺公望が追加)に、天皇から「元勲優遇の詔勅」などが下されたことで慣習的に成立しました。
元老の最大の権力は「後継の内閣総理大臣を誰にするか決め、天皇に推薦(奏薦)する権限」でした。内閣が総辞職すると、元老たちが非公式に会合を開き、密室談合で次の首相を選び出していました。元老院が1890年に消滅した後も、元老体制は昭和初期に「最後の元老」西園寺公望が没する1940年まで半世紀近くにわたり日本政治を実質支配し続けたのです。