比翼仕立ての真価は、実際の着用現場やメンテナンスの場においてどのように評価されているのでしょうか。大手百貨店の呉服担当者、老舗テーラーの仕立て職人、そして実際に着用したユーザーのリアルな検証データから見えてきたポイントを挙げます。
第一に、結婚式場の着付け師からは「現代の比翼仕立て黒留袖は、本重ねに比べて着付けにかかる時間が約20%〜30%短縮され、新郎新婦の母親にかかる肉体的負担を劇的に軽減している」という声が挙がっています。昔ながらの本重ねは長襦袢、下重ね、本着物と3枚の帯締めが重なるため、披露宴の数時間で体調を崩す着手も少なくありませんでした。比翼仕立ては日本の礼装文化を維持するための「現場が生んだ機能的発明」といえます。
一方で、洋装におけるフライフロント愛用者の間では、実用面での賛否が分かれる傾向も見られます。ビジネスパーソンへのヒアリング調査では、「朝の満員電車でコートのボタンが周囲の荷物に引っかかる心配がない」「ネクタイやストールが傷まない」という高い実用性を評価する声が7割を超える一方、「急いでいるときに片手でボタンを留めにくい」という操作性の難点が挙げられています。