日本の冬の風物詩である鍋料理は、本来なら家族や気の置けない仲間と一つの大鍋を囲む団欒の象徴だった。しかし、この店が提示した解釈はまるで違う。個人の好みに徹底して寄り添うセパレート仕立ての火鍋スタイルを取り入れつつ、昆布や鰹節の繊細な旨味をベースに据えるという大胆なハイブリッドだ。
卓上に運ばれてくる漆黒の小鍋には、自家製の辣油がきらめく紅湯と、透き通った黄金スープが対極をなす。一口すすると、舌先を走る鮮烈な痺れの奥から、丸鶏と香味野菜を丸二日煮込んだ圧倒的なコクが押し寄せてくる。刺激と滋味のバランスが絶妙で、レンゲを置く隙を与えない。