弓道の弦は、合成繊維製と天然の麻で作られる「麻弦」に大きく分かれる。特に京都の老舗弓師として知られる柴田勘十郎をはじめとする名匠たちが手がける竹弓においては、麻弦のしなやかさと独特の弦音(つるね)が不可欠とされる。弓の上弭(うわずみ)と下弭(しもずみ)にかける弦輪の仕上げ具合ひとつで、弓の冴えや打込みの感触はまるで別物へと変化するのだ。
日本の伝統工芸を支える武道具産業においても、弦輪の加工技術は手仕事の真髄とされている。職人の手によって撚(よ)られた麻の繊維を、射手自身の手元で最適な大きさに折りたたみ、しっかりと巻き込んで締め上げる。この一連の作業は単なる作業ではなく、射手と道具が対話する重要な儀式と言っても過言ではない。