かつてキャベツやニンジン畑が一面に広がっていた菊陽町(熊本県菊池郡)の景色は、わずか数年で劇的な変貌を遂げた。巨大な白亜の建造物として姿を現したのが、TSMC(台湾積体電路製造)の製造子会社であるJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)の工場群だ。この巨大工場の隣接地には、ソニーグループ(ソニーセミコンダクタソリューションズ)をはじめとする国内主要プレイヤーの拠点も連なり、一帯は世界最先端の半導体メガハブへと進化を遂げている。
かつて1980年代に世界の頂点を極めながらも衰退を余儀なくされた「シリコンアイランド九州」の記憶が、まったく新しい国際分業の形で鮮やかに甦りつつある。日本政府の手厚い支援とグローバル企業の戦略が合致した結果、菊陽町周辺には化学材料、製造装置、物流、エンジニアリングサービスを提供する国内外のサプライヤーが続々と集結。地方の町が突如として世界の半導体サプライチェーンの中枢神経に接続された瞬間だった。