『戦メリ』での成功は序章に過ぎなかった。ベルナルド・ベルトルッチ監督に見初められた坂本は、1987年の超大作『ラストエンペラー』に甘粕正彦役として出演すると同時に、劇伴の作曲を担当する。だが、その制作プロセスは過酷を極めた。
撮影終了後、わずか数週間の納期で膨大なオーケストラ・スコアを書き上げることを要求された坂本は、ロンドンとローマを往復しながら不眠不休でピアノに向かい続けた。西洋近代音楽の理論と中国伝統音楽の旋律を極限まで融合させたスコアは、日本人初となるアカデミー賞作曲賞を受賞。妥協を許さない若き日の執念が、ハリウッドの頂点をこじ開けた瞬間だった。