「いい人がいれば結婚したいし、子どもも欲しい」
バラエティ番組のトークコーナーで、志村さんは事あるごとにそう口にしていた。決して独身至上主義者だったわけではない。むしろ誰よりも人肌恋しく、温かい家庭に対する憧れは人一倍強かったと言われている。歴代の交際女性たちとも常に結婚を視野に入れた真剣な付き合いを重ねていた。
それでもゴールインに至らなかった最大の要因は、コント・喜劇に対する異常なまでの完璧主義と妥協なき情熱にあった。朝から晩までネタを考え、深夜までスタッフや後輩を引き連れて飲み歩きながら笑いのアイデアを練る。生活のすべてが喜劇を中心に回るサイクルの中に、穏やかな家庭生活を組み込む余白はどうしても生まれなかった。
最愛の母・和子さんが亡くなった際、志村さんは深い喪失感に打ちひしがれた。母を安心させたいという一心と、芸人として24時間を笑いに捧げたいという業。その狭間で揺れ動いた結果が、生涯独身という選択だったのだ。