女優としてのキャリアを順調に歩んでいた若き日に、元大関・貴ノ花との結婚を決意したことで相撲界への扉が開かれた。ここから始まった道のりこそが、彼女の運命を大きく変えることになる。当時の二子山部屋を切り盛りする女将の責務は想像を絶するものだった。大所帯の弟子たちの健康管理や礼儀作法、精神的なケアに至るまで、裏方として部屋の屋台骨を支え続けた歳月に関する経緯解説を紐解くと、その驚くべき精神力に圧倒される。
藤田が築き上げた女将像は、従来の「三歩下がって影から支える」という固定観念を覆す、華やかさと芯の強さを併せ持った新しいスタイルだった。のちに横綱へと昇り詰める二人の息子を育て上げた実績は、相撲史においても燦然と輝いている。紀子の名は、昭和から平成にかけての相撲黄金期を語る上で欠かすことのできない象徴となっている。